ポルトガルへの道

 

モザイク様をなすヨーロッパ諸国にあって、イベリア半島の間借り人のような

ポルトガルの位置はいかにもこの国らしい。陸路なら隣国スペインの領土を通らなければ

どこにも行けない訳で、海の向こうを夢見た気持ちも分かろうというものである。

ここでは、ヨーロッパ大陸南西端にあるポルトガルへのアプローチを検討したい。

 

T。スペインを経由せず直接ポルトガル入りする

 @空路

日本からの直行便は(多分)無いので、いったんパリかどこか便利のいいところに飛んで、リスボン便に乗り継ぐ。問題点は、日本からのヨーロッパ便(シベリアルート)は、ヨーロッパに夕刻に着くので、乗り継ぎ便を利用する場合、リスボン入りが夜遅い時間になってしまうこと。機上にあって日が沈んでいくのを眺めるあたりから、治安のこと、宿探しのこと、大丈夫と頭では考えようとしても、不安な気持ちにとらわれてしまいます。1995年の私のケースは次の様でした。

まず、到着初日の宿は日本から予約して行きました。リスボンではロッシオ駅周辺やリベルターデ大通り周辺に安宿街があり、夜8時、9時位ならベッドを見つけられると思いますが、まだ体が旅モードになっていない到着初日のしかも空港到着が22時とあっては、割高な宿代も安心料と割り切ることにしました。

次に市内へのアクセスですが、この時間は公共の交通機関はなく、タクシーを利用することになります。ここで悪質タクシーの存在が気になりますが、念のため空港ので確認したところ、相手は初め質問の意味を取りかねていたくらいで、問題無いようでした。また物価の安いポルトガルではタクシーの利用に抵抗感が少ない。市内まで1,500ESC(1,000円余り)。11時すぎには無事自分の部屋に落ち着いていました。

 

 ASUD EXPRESS 〜パリから夜行列車で直行する

ORIENT EXPRESS(オリエント急行)の名は日本で良く知られている。あれは直訳すると『東急行』なのではないかと思っているのだが、『東急行』があるならヨーロッパには『北急行』も『南急行』もあるのである。北急行NORD EXPRESSがロンドンとストックホルムを結ぶのに対し、南急行SUD EXPRESSはパリとリスボンを結ぶ。ヨーロッパでは愛称をもって親しまれる国際列車がいくつかあるのだが、私は、名前から受けるイメージの良さ、遠い世界へ夢をつなぐ感じが好きで、この二つの列車は気に入っていました。

 

注)何故過去形で書くかというと、新幹線型の高速列車が走るようになって旧来型の急行列車は姿を消しつつあるからで、このへんのうらみつらみはいずれ「80年代バックパッカーの風景」で存分に書いて発散することにします。

 

さて、現在SUD EXPRESSは短縮されて、スペインのフランス国境駅IRUN始発。パリ-IRUN間はTGVを利用することになる。ただ、大半のヨーロッパの鉄道が狭軌であるのに対し、イベリア半島は広軌を採用しているので、フランス-スペイン国境で乗換えが必要なのは80年代も同様でありました。

[COOK(02年版)より]

       パリ  発 15:55 (モンパルナス駅)(TGV)

       IRUN着 21:32

           発 22:00 (SUD EXPRESS)

       リスボン着 10:45 (サンタ・アポローニア駅) 

 

私は、コインブラからSUD EXPRESSでフランスを目指しました。このときはコインブラB駅夕刻発。人影まばらなホームで列車の入線を待っていたとき、細長い青い壷を頭に乗せた女性が、線路の向こう夕日を浴びつつゆっくり移動していきました。印象に残る詩的な光景でした。

 

U。スペインから入国する

@アンダルシアルート 

これは是非お勧めしたいユニークな国境越えである。セビリアからローカル線を乗り継ぎ、Ayamonteに向かう。Ayamonteはスペイン-ポルトガルの国境線の最南端、大西洋にぶつかるところにある港町で、川を渡った対岸がポルトガルのVia Real de Sant Antonio。船着場から30分毎に出るフェリーに乗る。何から何まで木造りの、ベンチが15こあるだけの、漁船のような船であった。40人ほどの乗客をのせて10分ほどの船旅。ヨーロッパの国境越えでは珍しくパスポートにスタンプを押され、ポルトガルに入国。時計を1時間遅らせる。Sant Antonioも平凡な田舎町である。鉄道駅は船着場のすぐ前にあるが、リスボンまで距離があるので、このユニークな国境越えにペースを合わせてここらで一泊するのもいいと思う。

 

上記は84年の体験談であるのだが、02年版COOKを見てみると、Huelva-Ayamonte間は廃線となって代行バスが走っている。1日3往復のローカル線の雰囲気が良かっただけに残念。しかしフェリーは健在のようで、スカイブリッジ(カイラキン)の二の舞が無かったのは幸い。

 

Aガリシアルート

ガリシアを旅していれば当然、南下すればポルトガルということは常に頭にあった。ムーロスやヴィーゴなどの大西洋に臨む町や漁村を見てきたので、この風景が国が変るとどう変るかを見たかったのである。迷ったがこのときの旅のテーマが「サンチャゴ巡礼の道」(サンチャゴ・デ・コンポステーラプエンテ・ラ・レイナレオンご参照)にあったので、結局見送った。

 

COOKのスペイン/ポルトガルmapをご覧下さい。大西洋沿いのローカル線は路線図を見ているだけで乗ってみたくなります。速い列車ならばヴィーゴを出て2時間あまりの後には、ポルトガル北部の中心都市ポルトに着いています。

ポルト 雨の日のサン・ベント駅 

 

Bエストレマドゥーラルート

最後は玄人好みというかとても渋いルート。リスボンの東の内陸部アレンテージョ地方は、エルバス、エストレーモスなど是非訪れたい素晴しい小都市が散在する。これらの都市へのアクセスを考える時、普通リスボン基点で考える訳だが、実はアレンテージョ地方はスペインのエストレマドゥーラ地方と背中合わせの位置関係にある。例えばエルヴァスなどはかなりスペイン国境に近く、スペインのバダホスと目と鼻の先である。両者には鉄道の便もあるのだが、この地方は鉄道はかなり不便なので多分バスでの移動を優先的に考えた方がいいと思います。

 

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