大学町
(データ:1984年1月)
サンタクララ橋と旧市街 朝もやに隠れているてっぺん辺りがコインブラ大学 ◇大学町 残念ながら日本には大学町というのはない。多分それは旧制高校の改組と共に消えたのであり、御茶ノ水にその空気はないし、かろうじて京都がその名残をとどめるか。いずれにしても私にとっては文学作品の中にのみ存在する世界である。 しかし、ヨーロッパにはそれがある。イギリスのオクスフォードやケンブリッジを持ち出すまでもなく、パリのカルチェラタン、ドイツならハイデルベルグ、スペインならサラマンカ、といった具合。コインブラ大学も古さではヨーロッパ有数で創立は13世紀に遡るようである。 やはり町なかは本やノートを抱えた学生の姿が目立つ。いかにも学生食堂といったような風情のレストランも多い。(私も混雑するレストランで、コース一通り+1/2ワインで、200Esc(約350円)という安価良質の食事にありつきました)コインブラを訪れた時は私も学生で、大学の門からどやどやと出てくる学生たちの姿を興味深く眺めておりました。 打ち棄てられるサンタクララ寺院 |
◇アクセス コインブラはパリ-リスボン間の幹線上にあるが、列車が止まるのはコインブラB駅。ヨーロッパ都市のターミナル駅は、例えばマドリッドならチャマルティンとアトーチャといった具合に、期待やら苦労の記憶やらある感懐を持って旅行者にその名を記憶されるが、Bというのはまたどうにも素っ気なくて、かえって印象に残ったものでした。 コインブラA駅へは列車で一駅(概ね一時間に一本程度)。こちらは町の中心に近い。駅を背に川沿いに歩くとすぐサンタクララ橋のたもとの広場に至る。町の組み立ては、ここを起点に考えると分かりやすい。iもこの広場にある。 (この町は見どころが多い。主なものを以下にいくつか) ◇旧市街 丘に作られた町で、細い坂道が入り組んでいる。女性がかごを頭に乗せて歩いている素朴な雰囲気は、少しリスボンのアルファマを思わせる。 旧コインブラ大学では、図書館が必見。大きいものではないが数世紀に亘るヨーロッパ知性の伝統をひしひしと感じる。 マシャード・デ・カステロ美術館は展示も充実しているが、より印象的だったのは、ローマ遺跡である建物の基部、地下室。急な斜面に建てられているため、片方は地下室でも奥へ行くと地上部であり、ちょっと変った見物であった。 旧カテドラルは回廊の装飾がいい。 ◇サンタクララ橋を渡った対岸 すぐ左手にあるのが、旧サンタクララ寺院。これは廃墟であり、畑の中に放置されている。下部は泥に埋まり、水がたまっていた。これも珍しい見物であった。 その先が、「ミニ・ポルトガル」。ポルトガルのさまざまな伝統的民家などのミニチュアのなかをガリバー気分で歩く趣向。こういうものは前提となる知識がないと面白さが分からないし、そもそも一人で行って楽しいところではない。ただ、ポルトガルにもかつての大航海時代の栄光があったわけで、過去の栄光の展示は気の毒というかほほえましいというかちょっと面白かった。 ◇宿について この町はペンション多数。駅周辺が手っ取り早いが、町なかを望むならば、iのある広場から賑やかな通りを進むと10分ほどでサンタクルス修道院に至る。安宿はこの間の左側の一帯を当たってみると良いと思う。 |