白い
(データ:1989年9月)
マルチール広場の一角からカスバを見る ケチャウモスクが見えている ◇マルチール広場 ぺシュリーモスクが一角に立ち、グランモスクやカスバの入り口になるケチャウモスクも近い。海側に降りれば魚市場である。 マルチール広場は夕暮れ時が良い。昼間のチリ、ほこり、排ガスの印象が、広場全体がぼんやりした情緒的な感じに変わる。ぺシュリーモスクも昼間見ると作り物のようで感心しないが、夕日が当たると白さが引き立つようである。 ◇アルジェの浜 観光名所ではないが、良いなと思ったのはアルジェ港の西側に続く砂浜。アルジェ港は大型船が接岸する立派な港であるが、右の写真に見える海軍の施設のある突起を回ると手つかずといった感じの浜辺が広がっている。 ◇写真撮影に注意 アラブでは写真撮影は慎重になるが、この国では鉄道駅など撮影が制限されている場所があったと思う。国民宮殿で建物に向かってカメラを構えたところ、制服が3人駆け寄ってきた。宮殿に入るときに中で写真をと撮ってはいけないと注意されていたのだ。外では撮ったが、中では撮っていない(本当は2,3枚撮っていた)と頑張っていたらやがて解放してくれた。 ◇ブラックマーケット もう一つこの国で気をつけたいのは通貨管理の厳しさ。ティパサで土産物屋のおやじに、ドルを持っていないか、DMでもいいぞと持ちかけられたが、ブラックマーケットとの遭遇はこの時の一回のみであった。 アルジェの海岸通りにて |
ここではその他のアルジェ、町の様子や人の様子など書きます) ◇白いアルジェ アルジェといえばまずカスバということになりますが、この町にはもう一つ、白いアルジェという形容があります。空港からバスに乗ってアルジェに向かうと白いかたまりがぐんぐん近づいてくる感じです。海岸通り側から見ると、手前に官公庁や銀行の類と思われる大時代的な建築物が立ち並び、そのすぐ後ろが斜面に建物がへばりつくカスバ。それらが全体として白の景観をなしています(左写真)。 ヨーロッパで白い町というとマグレブと同じくアラブの支配を受けたスペインはアンダルシアの白い町(村)が有名(例えばカサレス)ですが、あれはたいてい山中にあって、海に臨むアルジェとは感じが違います。私はガリシアのラ・コルーニャを訪れたときにアルジェを連想しました。 ◇町の“へそ” 新市街と旧市街の全体を考えるとホテル・アレッティ周辺が町の中心という感じですが、カスバなど旧市街の観光としては、ポートサイド・スクワールとマルチール広場の二つの広場をおさえると、分かりやすいと思います。この二つの広場を結ぶ奥側の道が安宿街KAMA通り、そのすぐ上はもうカスバです。 ◇KAMA通り ポートサイドスクワ−ルから緩やかに上るアラブ的情緒のある通りで、山側のいずれも怪しげな小路を上がっていけばカスバに入ります。直進すればやがて道は下りとなり、装飾された塔や3連アーチの均整が美しいケチャウモスク(左の写真に半分見えている)に至ります。 ◇バルド博物館 民俗博物館のようなもので、ハーレムの如き光景を作る人形の展示があったり、サハラコーナーもあったりして結構楽しめる。私にとっては夢のままに終わったタッシリ・ナジェールの壁画をコピーした展示もあった。高台にあってアルジェ港の遠望が良いのだが、難点は中心部からの遠さ。私はアエロフロートのオフィスを探し歩き、それが偶然この博物館の近くであったのだが、地図を見てみれば直線距離でも3キロは離れている。 ◇街角の様子(アルジェの人たち) 多分失業率が高いせいだろうと思うのだが、大勢の男たちが何をするでもなく町に出ている。町なかでは戸口やウィンドウに背中を付けて立っているし、海岸通りに出れば、いずれも同じような間隔を空けて石のヘリにもたれかかりぼんやり海を見ている。服装は9割以上洋装であった。 アラブ特有の視線のきつさはやはりあって慣れるまで戸惑うが、物売りや自称ガイドに悩まされたモロッコやエジプトと異なり、話しかけてくる輩がいないのは旅行者にとって有難いことであった。人は押し並べて親切。尋ねれば一生懸命答えようとしてくれる(英語がほとんど通じないので、お互い苦しい思いをすることになるのだが)。 男ばかり目立ったカイロの異様さはアルジェにはなく、女性の姿も少なくない。やはり洋装が多いが、特に中年以上の女性では、頭から布をかぶり、顔の下半分をぴんと折り目のついたハンカチ様の布で隠している人も目立った。しかしバルド博物館方面の新市街では女子学生の姿も見られ、カフェの支払いで戸惑っていたときに助け舟を出してくれた女の子がいたのだが、他所ではすぐに忘れてしまうようなこともアラブの町では新鮮に感じられた。 |