アルジェの飲と食

(データ:1989年9月)

注)為替レートはこの時1DA=18円。現在は下落し、約1円。

◇水に恵まれている?

アルジェ空港に到着し、必要な用事を片づけている合間、のどが渇きに耐えかねてカフェに入って水を注文。“water”という外国語を使うのを仲間に聞かれて冷やかされているウエイターのお兄さんに清算を申し出ると、「いいんだ」とニコリ。ヨーロッパでも水は有料である。アルジェリアといえばサハラ砂漠のイメージであったからこれは意外であった。そういえば、町なかでミネラルウォーターが売られているのが目に付かなかった。

 

◇水道水は一応飲めた

到着初日、宿に入ってしたことは、どこの国でもしてきたように、水道水の味見。コップに水を注いで、国が国であるだけに恐る恐る飲み干す。石灰か何か混じっているような味でおいしくはないが、少なくともエジプトでのようにコップ一杯で30分後にはトイレに駆け込でいるというようなことはなかった。

アルジェリアからの帰途、西独ハイデルベルグに宿泊したのであるが、翌朝ひょっとしてこれは飛行機に乗れないのではと思うほどのひどい下痢に見舞われた。ただ、この旅はスタートから高熱が出る体調不良であったし、アルジェリア国内でのあれこれはそれなりにしんどかったから、その原因がアルジェリアの水にあったかどうかは不明。

 

◇カフェは至る所にある

カウンターとごちゃごちゃしたテーブル。客は殆ど男であるが、エジプトの水煙草を喫むアラブ人がじっとこちらを見るといった異様さはなく、大変入りやすい。カフェ文化はフランス植民の影響だと思われるが、日差しの強いこの国では路上のカフェテラスまでは根づかなかったようだ。

面白いのは、昭和の日本にあった、プラスチックの透明なボックスに色鮮やかなジュースが入っているやつ。小さなカフェでも必ずあった。ポピュラーなのはレモンジュースと同じ色の、しかし何やら甘味料を混ぜてレモネード風にしたもので、一杯1〜2DAと庶民的。バリエーションは他にイチゴミルクや、少し高くなる(5DAぐらい)が本物のレモネードなどで、いずれも結構おいしい。

始めのうち生ものは避けてなどと考えていたが、この国は歩き回っているとやたらとのどが渇く。カフェはすぐに見つかってしまうので、こうなると避けるどころか、がぶ飲み状態であった。

 

 

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アルジェの街角にて

 

◇アルコールが飲める

イスラム国家であるからアルコール類はダメと思っていたら、レストランに入って、相席で向かいに座ったおじさんがビールを注文。意外に思いつつさっそく自分も注文。「アルジェリア宿2」で紹介しましたが、フランス支配の名残か、国産のワインやビールまであるのでした。しかし、ひょっとするとこういった「退廃」が後のイスラム原理主義の暴風につながったのかもしれませんな。

旅日記によると日々何度となくカフェに立ち寄っていますが、記録に残るのがジュースばかりであるのを見ると、カフェでアルコールは出してないようです。国民宮殿のカフェでビールはあるかと尋ねたところ、おばさんに怖い顔で「ないよ」と言われました。

◇レストラン料金は高い

町を歩きながら値札など見ていて思ったのであるが、この国は物価が高い。隣国モロッコに比べるとひょっとして10倍ぐらいの差があるのではないか。旅行者物価で特にそれを感じたのはレストラン料金の高さ。食堂然とした店でもちょっと食べるだけで50DAはいってしまう。

 

実例 サラダ、魚フライ3つ、ビールで53DA

   クスクス(60)、ビール(25)で85DA

   魚スープ、魚三匹グリル、ワイン(ハーフ)で100DA

 

安くあげるには、人の肩越しに皿を受け取り、カウンターで隣の男と肩をぶつけながら食べる立ち喰いメシ屋。一応フランス式にかごに入ったパンが付いてくるのだが、私が一切れ食べただけで後手を出さないでいると、このかごはすぐに皆の共有物となり、あちこちから手が出てどんどん持って行ったのは面白かった。

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魚市場

この近くに魚料理を出すレストランが集まる一角がある

 

◇アルジェリア料理体験記

港町であるから魚介類がおいしい。鰯の身を溶かしたようなスープも、一匹丸ごとフライやグリルにしてライムを絞って食べるのも美味。最終日に余ったDAを使い切るべく、ガイドブックに出ていたシンドバッドという魚料理専門店に挑戦。初めに魚が並ぶ棚に案内されて、自分が選んだ魚が調理されて出てくるのをワインを飲みつつ待つというぜいたくをしました。(値段も破格の〆て260DA

また、アルジェリアの伝統料理で食べたかったのがクスクス。マグレブではタンジールで一度食べているが、こちらの方がはるかに旨かった。小麦粉はどうしても飽きるが、スープは全部食べる。鶏肉が骨付きのカタマリで迫力がありました。

スーパーで食料品を調達というパターンがしにくい代わり、この町では外食を楽しむとよいと思います。サラダひとつとっても日本で見かけない形状のものが入っていたり、揚げたパンや薬味として赤い粉が卓上に置かれたりと、異文化体験の連続でした。選んだ串を焼いてくれる焼き物屋があったり、パエジャを出す店があったりとバリエーションも豊富です。

 

◇蠅

日本にいれば蠅が一匹でも食卓にうろうろしていれば神経質に手が動くが、レストランのテーブルに座れば周りをかなりの数の蠅が飛んでいる。卓上のパンには常に数匹止まっている。手で追い払うのだが、きりがないことに気付き、とうとう最後は諦めてしまった。運ばれてきたワインをコップに注いで飲もうとすると中で一匹泳いでいる。今入ったのか、それとも元々ボトル(開栓してあった)に入っていたのか定かではない。気にした方が負けという感じで、隣のテーブルからコップをとって飲み続ける。

上記の「シンドバット」でも、周囲を飛ぶ蠅はさすがに殆どなかったものの、ウエイターが持ってきた皿に蠅の死がいが張り付いていて、しかしウエイター氏は事も無げに爪でこれを弾き飛ばし、魚をとり分けて載せていったのであった。

厨房の状態を想像すれば、自分の目に見えるところだけ気にしても意味が無いわけである。これも異文化体験と思うことにしました。

 

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