リスボンは七つの丘の町といわれる。地形の起伏が魅力を高める首都といえば、まずローマ。比較的ゆるやかながら
パリもそう。(ヨーロッパではないが、実は東京が典型的な坂の街だと思うのだが、その魅力を活かしきれていないのが
残念)リスボンは、これらの都市に較べても起伏が激しい。高低差をカバーするためのケーブルカーやエレベ―タ―が
存在する町なのである。さらにパリやローマとの違いは海に面する都市であるということ。本当は川(テージョ河)な
のだが、河口部であり、印象としては海である。
複雑な地形を持つリスボンであるが、観光客に縁がある場所に限定するなら組み立ては意外にシンプル。このことを
下の写真で説明したい。(リスボンを大掴みで把握するには、この位置に立つことをお勧めします)
まず、中央部の凹み、テージョ河が見えている辺りがバイシャ地区。その左側の丘がアルファマ、右側の丘がバイ
オ・アルトである。つまり河に沿った、丘―谷―丘のセット。もう一つの軸が、バイシャ地区から真っ直ぐこちらに
向かってのびているリベルダーデ大通りで、中央に見えている円柱(ポンパル候像)の立つ円形の広場まで延々1キロ
余りに及ぶ大通りである。
エドアルド7世公園最上端から中心部方面を見る
小さな子が一人前にサッカーをしているのが可愛らしくて、しばらく眺めていた
アルファマとバイオ・アルトは別項に譲るとして、ここではバイシャ地区からエドアルド7世公園に至る縦軸につい
てもう少し述べさせて頂きたい。
南部方面からリスボン入りすると(ポルトガルへの道で紹介したアンダルシアルートのケースですね)、列車が着
くのは対岸のバレイロ駅で、リスボンの町へはフェリーに乗り換えることになる。このとき船上からアルファマやバイ
シャの町並みが近づいてくるのを眺める体験は素晴しい。フェリーが着くのがバイシャ地区の玄関口コルメシオ広場で
ある。この広場は駐車場になってしまっていて広場の機能を果たしていないが、方形の一辺が海に面していることで独
特の雰囲気がある。
コルメシオ広場から門をくぐると賑やかな繁華街、バイシャ地区に入る。地図を見ていただければ一目瞭然だが、
碁盤の目を縦方向に拡大したようなちょっと珍しい区画構成になっている。数百メートルで北端フィゲイラ広場に至る。
その左奥がロッシオ広場さらにその先がレスタウラドレス広場。バイシャ地区は南端はコルメシオ広場しかないからす
ぐに頭に入るのだが、北側は大きな広場が斜めに連なるので、慣れるまでは混乱してしまう。
レスタウロドレス広場からゆるやかに上るのがリベルダーデ大通り。幅が広く、軸の部分は公園になっている。こ
れだけの規模となるとシャンゼリゼ級といえるが、これには理由があって、リスボンは1755年の大地震で一度壊滅
的打撃を受けたそうで、バイシャ地区からリベルダーデ通りにかけての一帯は都市計画のもと復興されたということで
ある。リベルダーデ通りは円形のポンパル候広場で尽き、その先エドアルド7世公園広場へと続くが、この辺りのデザ
インは見事。写真の角度からの左右対称性などパリのルーブルから凱旋門に至る対称性(パリ礼賛(その1)ご参照)
を髣髴とさせる。因みにこの都市再生事業を指揮したのが、ポンパル公爵。広場に立って日々我が作品の出来栄えを眺
めているというわけだ。
急坂を行くケーブルカー
接地面と床面とはかなりの角度があって、
横から見ると面白い形をしている