カルチェラタンとリュクサンブール公園

 

 

  町を知ろうと思えば名所めぐりだけでは物足りず、町中ある程度歩き回って初めて納得感を得ることになります。パリ、ローマ級の大都市になるとこれがかなり大変で、ローマでは一週間を要し、パリでも10日位は未知の生き物に挑むような心持ちで歩いておりました。パリ礼賛(その1)パリ礼賛(その2)はその結果感じたことをまとめたものです。

 歩くというのは、有名観光地から果ては地下墓地や下水道見学に至るまでいろいろなところに出かけていったものですが、安宿を転々としつつもいずれもカルチェラタンから出撃しました。これは、恐らくは草創期「歩き方」に感化されたものと思われますが、観光客群がるセーヌ右岸に冷たい視線を向けつつ、若者はセーヌ左岸、特にパリが最もパリらしい顔を見せる学生街カルチェラタンと信じていたためです。その後パリを再訪すること数回、しかし、いずれも一泊二泊程度の滞在であり、私が訪れるのは決まってカルチェラタンという偏愛ぶりなのであります。

 

←カルチェラタン(サンミッシェル通り)

 

 

 

 

カルチェラタンというのは、名所がどうこうという場所ではなく、学生街の空気がいいのであって、ちょっとその良さを具体的に説明しにくい。私は一番いいのはリュクサンブール公園に行って半日過すことだと思う(厳冬期を除く)。

 

当時の日記を読むと午前中ルーブルを見て、昼にリュクサンブール公園に戻り、夕方モンマルトルに出かけていくといった具合に、毎日、2,3時間はリュクサンブール公園で過している。気に入っていたのが鉄製の椅子で、左の写真にも見えるが、地面に固定されてなく、二つ向かい合わせにおいて、足を投げ出して座るのに最適。気候のいい時期はこの公園はいつも賑わっている。パリの住居は殆どがアパートであるから、住民が太陽を求めて出てくる。夏場は、噴水におもちゃのヨットを浮かべ、色とりどりの花が咲き、華やいだ空気である。

 

←リュクサンブール公園(いい写真がありませんでした。本物はずっと素晴しいです)

 

パリ滞在中、昼食はこの公園でとることが多かった。満ち足りて足を投げ出し、モンパルナスタワーやエッフェル塔を遠望し、再び公園内の光景に目を転じる。通ってゆく人の仕草など眺めていると、静かでありながらも解放的で自由な空気がパリにいる喜びをひしひしと感じさせるのでありました。

 

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