ファド体験記

(データ:1984年2月)

◇ファドを聴きに行く

スペインのフラメンコほど一般的ではないかもしれないが、スペインにフラメンコがあるようにポルトガルにはファドがある。私は観光客向けのショーなど近づくのも嫌という性質なので、フラメンコには今も昔も全く興味がないが、ファドは「ポルトガルについて」で書いたようなポルトガル情緒を一度体験したくて出かけてみました。

 

◇同行者を見つける

これは人によっては平気なのだろうが、ファドを聴かせるところは一応ちゃんとしたレストランで、1人では入りにくい。アルファマでティムというオーストラリア青年と出会い、話がはずむままにバイシャ地区のカフェに行ってビールを飲みながら話を続けたが、夜も更ければ“じゃ元気でな”と彼が帰っていくのは町外れの野営地であり、欧米人バックパッカーにこの手の話を持ちかけるのは無理。私の解決策はYHに泊まって日本人旅行者を見つけるというもので、目論見どおり農閑期を利用して半年の旅に出ているという徳島の農業青年が話に乗ってくれました。物価の安い南欧ではYHの有り難味は薄いのですが、こういうYHの利用法もあるのでした。

 

 

◇A SEVERA体験記

10時近くなってそろそろいいだろうと店に入る。

・店内はそう広くなく、歌を聴くのに丁度良いサイズ。ステージといったものはない。

・最初は食事。値が張るわりに味は平凡。10時半、店内が暗くなり、ギターと太鼓の演奏、フォークダンスなど。客は観光客と見える中高年グループや30前後のカップルなど。

11時、再び照明が落ち、今度は老若二人の男性シンガーが順にギタリストの演奏で歌い、ようやく雰囲気が出てくる。食事はあらかた終了、飲み物のみの新しい客が次々に入ってくる。

11時半、女性シンガー登場。写真で見たとおりの黒い衣装である。2,3曲歌ってしばらく休憩というパターンの繰り返しで、疲れなくて良い。ギターやアコーディオンのソロがあったり、女性シンガーのデュエットがあったり多彩。最後は歌詞カードが配られて皆で大合唱となる。

・午前2時、お開き。料金は食事その他で2200esc(約4000円。現在はミニマムチャージ18ユーロ)店を出ればリスボンの石畳の道であり、耳に残るファドの音色が石畳を流れてゆくようであった。

 

 

 (アドバイス)

私は食事からスタートしたが、雰囲気が盛り上がってくるのは日付が変る前後から。値が張ることもあるし食事は自分でどうにかすることにして、 では席のみ予約するのが良いと思います。

ファドの余韻に浸りつついつまでも歩いていたくなりますが、午前2時は南欧の時間感覚をもってしてもやはり深夜。上記の宿の確保や同行者の確保は安全対策の意味でもあります。

◇ファドレストラン A Severa 

i でここがいいでしょうと言われたのがこの店。言われるままにその場で予約。後で調べてみれば観光客向けの非常にべたなというか、ポルトガルのファドレストランといえば真っ先にその名の挙がる店であった。まあサプライズはないかもしれないが、ひどい目にあうこともないと思う。バイオ・アルトでも手前の方で行き易いし、ここでなければという目当てがないなら、無難な選択肢では。

 

◇宿を見つける

ファドを聴きに行くと帰りが遅くなるので、店に近いペンションを確保します。我々が発見したのはロシオ駅横の階段Calcada de Duqueの途中にある Pensan DUQUE。A SEVERA まで徒歩2、3分という好立地。昼近いというのに散々ベルを鳴らした挙句に出てきた主人は寝ぼけまなこというちょっと変わった宿であったが、応対も部屋も一応まともで、ツイン500esc(1人500円足らず)という実質的な宿でありました。

(深夜帰館すると、その筋らしい女性達が入り口に立ち、中に入れば洗濯機が回っているという完全に昼夜逆転の宿でした。翌日も宿代払おうにもいくら声をかけても出てくる気配なく、余程そのままとんずらしてしまおうかと思ったほど。まあ興味のある方は探してみて下さい)

石畳の道(アルファマ)

 

◇外部サイト http://www.h6.dion.ne.jp/~fado/

 美しいトップページで、短時間ではあるがファドの音色(ギター)を聞くことができる。内容も充実。

 また、ファドを聴くにはyoutubeで検索を。

(私はA Severaのファドをカセットテープに録音してきました。たまに聴けばこのときの模様がありありと思い出されます。残念ながら音声ファイルの作り方が分からなくてこのページに添付できません。)

 

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