不凍港 ナルビク

(データ:1988年6月)

不凍港ナルビク

 

◇ナルビク港について

“不凍港ナルビク”は高校の地理で覚えた懐かしい呼称である。つまり、スウェーデン最大のキルナ鉄山で産出される鉄鉱石は、夏場はボスニア湾に臨む自国の港から輸出される。しかし冬場、内海であるボスニア湾が凍結して使えなくなると、鉄鉱石はスカンジナビア山脈を越えて、冬でも凍らないノルウェーの港ナルビクから出荷されるのである。ナルビクは北極圏にあり、緯度としては余程こちらの方が高いのであるが凍らない。この例から受験生は“湯たんぽ”メキシコ湾流に守られたヨーロッパの温暖な気候の仕組みを学ぶことになっている。

で、そのナルビクの地に立つこととなって、さっそく港へ行ってみた。習ったとおり、鉄鉱石を山積みにした貨車が並んでいる。鉄鉱石というのは赤茶けた色をしているのかと思っていたが、実際見てみると石炭のようなものであった。港では、中ほどに船が一隻浮いているだけで、他に出入りする船もなく、何かの作業が行われている様子もなく、上の写真に見えるような静かで漠とした北の果てであった

 

 

◇白夜体験記

北極圏に来た一番の目的は白夜を体験することであった。一晩中太陽が沈まないのは町のどの場所にいても同じであって、どこにいても白夜は白夜なのであるが、ナルビクでは町外れにロープウェイ乗り場があって、標高500mの山に上って“真夜中の太陽”を見ることができる。

ロープウェイは高度を上げるほどに上からナルビクの町や港を見下ろし、上に着いてみれば、外洋の方へとV字谷が広がって続いていく様子もよく見えている。(右写真)

 

ロープウェイ駅付近よりナルビクを見下ろす ⇒

時刻は、すでに午前0時を回っている   

 

 

真夜中の太陽は、そのV字谷の向こうの氷河地形らしいギザギザした山の連なりの上に浮いていた。(右写真)

右の写真、太陽にレンズを向けて撮っているため周辺が暗く見えているが、立っている高台は日の光を浴びて日中と同様に明るいのである。

明るいのであるがやはり昼間ではないということが体感として分かる。地平線近くの太陽は朝日でもなく、夕陽でもなく、清潔で冷たい光を放っていた。深夜にもかかわらず幾組もの人達が白夜見物に上がってきていて、山歩きしたり立ち止まったりする多くの人の姿があったが、我々が立っている高台は美しく、冷たく、音のない世界なのであった。

それはやはり尋常でない世界でした。(私は音のなさに耐え切れず、私としては珍しいことにウォークマンを聴いていました。)白夜は一度体験する価値があると思います。

◇アクセス

キルナとの間は夏場で1日3便。うち一本はストックホルム直通。これはどういう訳か上り下りで所要時間が4時間も違うが、いずれにせよ丸1日近くかかる長旅である。

ストックホルムからえんえん北上を続けた列車は、Bodenからスカンジナビア半島の付け根を横切る。キルナでは既に北極圏内。スカンジナビア山脈の高地アビスコを過ぎれば列車は下りにかかり、ノルウェー国境を越えればやがて列車は港町ナルビクに行き着く。

 

 

◇景勝ルート  

キルナーナルビク間は景勝ルートである。アビスコ周辺の山や湖の美しさはそちらに書くとして、ここではフィヨルドのことについて。

ノルウェー国境あたりからナルビクにいたるまでの間、列車からフィヨルドの様子がよく見て取れる。列車からずっと見えていた頼りない渓流が、ある瞬間V字谷の底の湖に流れ込む。外洋から数十キロ離れているが既にこれは海である。列車はV字谷の中腹を進み、フィヨルド見物しているうちに終点ナルビク到着。

ナルビクに向かう列車からフィヨルド見物

 

 

 

MIDNIGHT SUN (真夜中の太陽)

 

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