[ 80年代バックパッカーの風景]

とりあえず「バックパッカー交遊録」と仮題を付けてみたものの、「交遊」は大袈裟かも知れません。

旅は出会いと別れの反復なので、中には強く印象に残るものある、その個人的記録です。

「忘れ得ぬ人々」(国木田独歩)というのもありますが、あれはまた高尚典雅というか独特の世界だからなあ。

 

SCENE 13 リスボンにて  (1984年2月)

 

旅行者の交差というのは、ひとり旅をやっていれば日常的なことであって、以下の出会いも何があったという訳でもないのですが、哀感漂うリスボンでの出来事となると妙に心に残るものがありした。

 

落陽を眺めようとサンジョルジェ城に上がる。サンジョルジェ城というのは、リスボンの旧市街であるアルファマの一番高い所にある城址である。ここからリスボン中心部全体を見渡すことが出来る。迷路の集積のようなアルファマのごちゃごちゃした感じを見るにはサンタルジアの展望台の方が良いが、夕日見物には425日橋が大きく視界に入るサンジョルジェ城の方だ。

 

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サンジョルジェ城から見る落陽

 

テージョ河と425日橋の向うに日が沈む

 

 

 

 

 

夕日を眺めていたときに、ひとりの旅行者と出会った。ティムという名のオーストラリア人で、インドネシア、インド、ネパール、ヨーロッパという順で、この2年、働きながら旅を続けていたそうだ。日が沈んでしまっった後、彼と城址を少し歩く。内部は鳥類の動物園になっていて、木の上で休む鶏のような鳥がいた。

 

バイシャ地区へと下り、適当なバルに入ってビールを飲む。私の英会話能力は相手次第というところがあって、得意になったり、がっかりしたりを連日繰り返していたのだが、ティムの英語は分かり易く100%理解できる。彼は5km離れたキャンプ場で野営していると言った。

 

ひとしきり話した後、彼と別れた。どちらも数日はこの町にとどまることにしていて、機会があったらまたこの店で会おうと言い合ったが、まあ、別れの挨拶みたいなものである。私は食料品店に行って、ワイン1ビン、ハムとレタスの挟んである大きなサンドイッチ、バナナ味のヨーグルト、オレンジ2個買ってpensaoに戻る、と旅日記に残る。(pensaoはこの国の安宿の名称で、本当はaの上に ~ が付く)

 

 

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リスボン・バイシャ地区

 

 

 

 

 

 

 

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