ウイーン

(データ:1988年12月ほか)

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プラター遊園地の観覧車

写真だけで気付いた人は偉い。「第三の男」で主人公が死んだ筈のハリーと再会するあの観覧車ですね。映画ではウイーンの秘密めいた感じが良く出ていました。この写真は’82年に撮ったものですが、この時点ですでに観覧車は一世紀近く回り続ける年代物という話でした。

 

◇印象

バロックというのか、パリ同様、中世色が乏しい。音楽の都でありそちら方面に興味のある人にとっては恐らく魅力は尽きないのであろうが、私としては町が整い過ぎていて物足りない。聖シュテファン寺院は見る価値があると思うが、その後行くところがなくて困った。モーツアルトの像の前の花壇に「ト音記号」の形に赤い花が植えられていて、後でガイドブックを見てみると撮影スポットの一つであったみたいなのだが、私はけっという感じで横目で見つつ通り過ぎたのでありました。

 

◇ウインナー

朝食をとろうと聖シュテファン聖堂の近くのカフェに入ってエスプレッソを注文したところ、生クリームがかかっていて、ウィンナーコーヒーとはこれかとしみじみ感動しました。ソーセージだけでなくウインナーなんとかという言い方はよくある様です。因みに名物ウインナーシュニッツエルはプレーンなカツレツで、しっかりした味付けを好むなら「パリ風」など別の形容詞がついたものを選択するとよいと思います。

 

◇首都ウイーン

地図を見れば一目瞭然だが、ウイーンというのはオーストリアの国土の東端にある。首都としてはかなり不自然な位置である。しかもオーストリアという国自体、東欧に突き出した西欧の半島のようなものであるから、ウイーンは西洋でありながら、北、東、南を東欧諸国に囲まれる位置関係にある。これは旅行者としては東欧に行くときウイーン経由が選択肢になることで気付かされるぐらいのことだが、政治の裏舞台として色々あったのではないかと妄想をたくましくしてしまうような、まことにそんな位置にあるのである。そういえばゴルゴ13もウイーンで活躍していたなあ。(現実のウイーンは明朗な、そういうことを感じさせない町です。名画「第三の男」のウイーンはもはや存在しません。)

 

 

◇ウイーンの駅

良く知られていることではあるが、ウイーンには主要駅が複数ある。旅行者が使うのは、スイス、ドイツ方面の西駅、イタリア、ユーゴ方面は南駅、そしてチェコ方面のフランツ・ヨーゼフ駅である。

かつて私はプラハから午後の長距離列車でウイーンに向いました。フランツ・ヨーゼフ駅への到着予定は夜9時半。ヨーロッパ旅行に慣れてきたころで、駅周辺には安宿街があるものとたかをくくっていた。ところが着いてみるとあたりは暗く、人に尋ね尋ねホテルを見つけても閉鎖中だったり、満室だったり。途方に暮れたが、はっと思いついてトラムを乗り継ぎ、西駅へ向かう。0時発、バーゼル行きの夜行が一本残っていて事なきを得たのでありました。再訪の気安さで油断したのですが、「新たな町には午前中に到着」の原則を身をもって思い知りました。

左に書いた印象もあってかウイーンと私はいつもすれ違いで、都合3回行っているが結局宿泊することはなかった。何だかこの町には毎回夜行列車で出たり入ったりしていたような気がします。

 

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