食について(実践編PARTT)

 

 大都市を除いてイタリアでファーストフード店を見かけることはありません。食事を大切にするイタリア人のライフスタイルに馴染まないのでしょう。食材を買うにしても、スーパーはあるにはありますが、大型店は稀。逆に対面販売の個人商店の人気は根強いものがあります。町なかの八百屋や肉屋にはたいてい客がいて店主と話しています。(シャッター通り化して町の活気と魅力を失った日本の地方都市との違いがここにありますね)

 

 食を大切にしている国ですから当然美味しい。極貧バックパッカーで無い限り食事はイタリア旅行の大いなる楽しみであるわけですが、問題は如何にこれにアプローチするか。ガイドブックには有名レストランや名物料理の紹介はありますが私には縁が無い。「歩き方」は多少ましで、レストランでのやりとりの方法やメニューの読み方などが説明されていますが、どうしても最大公約数的な内容になってしまい、あまり実際的ではありません。例えばメニューの対訳表など、店で実際にメニューを手にしたとき、イタリア語名を一つでも覚えておこうと対訳表に目を走らせるのですが、地方色の濃いイタリア料理では一致するものをなかなか見出せません。

 

 私はここ数年イタリア通いが続いていて自分のスタイルらしきものが定まってきたので、ここ書いてみようと考えた次第。食べ物の好みは個人差がありますし、まして私は食通の類ではまったくありません。上記の「最大公約数的」の逆を行こうということで、あくまで私はどうしているかという話ですのでその辺はご理解を。(PARTTはレストラン編、PARTUは食材編です)

 

レストラン編

 

◇レストランを選ぶ

・食事をする場所としては、BAR(バール)、ピッツエリア、レストランがあり、この順で食事の内容がしっかりしたものになります。もちろん値段も高くなります。ここではレストランについて述べます。

・レストランの名称は、リストランテ、トラットリア、オステリアなど複数ありますが実質的な差は無いようで、むしろ店の前に立ったときの感じで良し悪しを判断します。曖昧なようですが、ちょっとここは入りたくないなと思う店にはやはり入りたくありません。(何か見分け方みたいなものがあるのか興味があって、或る時、知り合ったイタリア人に尋ねてみたところ、さあと首をかしげ「やっぱりフィーリングだよ」という回答でした)

・レストランは店先にメニューを掲示しているので、町歩きの途中レストランを見かけたら、メニュー表を見て自分が食べたいものを出しているか、値段はどうかなどチェックしておきます。これは旅行者の基本動作で、ガイドブックに日本人用のメニュー(高い値段がついている)を出されたとか、二人分の筈が1人分の料金だと言われたとか、つまりぼられた話が載っていることがありますが、このようなトラブルに会うことは普通考えられません。

・観光客向けの店よりは、地元の人が通う店を選びたいので、観光エリアの店はなるべく避けます。呼び込みが立っているような店は論外。「日本語メニューあります」の店も避けています。

オルビエート ドウオモの横手にあるリストランテ

(トップページの写真のレストランです)

入り口の右手にメニュー表が見える

◇レストランに入る

・営業時間は、昼は12時半から3時ぐらいまで。夜は7時ぐらいから開ける店もありますが、賑やかになるのは8時を回ってから。レストランではかなりしっかり食べることになるので、1日2回はちょっと無理(経済的にもつらい)。で、私は昼食をレストランでとることにしています。夜は多少雰囲気が重くなる気がして1人では居づらく感じてしまうことと、午前中歩き回ってのどが渇いているので冷えた白ワインの幻がちらちらし出すためです。

・通常レストランで1人で食事をする人はいません。旅行者でも外国人は一人旅というスタイルが稀であるためです。習慣の違いもあるしで1人でレストランに入るのにはちょっとした勇気が必要です。イタリアの食事時間は日本と較べて1〜2時間遅いのですが、気持ちがぱっとしない時などこれを逆手にとって開店直後の時間帯に入ることもあります(しばらくはがらがら)。

・ドアを開けて入り、カメリエーレに一人である旨を告げると、テーブルを示します。4人用のテーブルの場合なら用の無い3人分のテーブルセッティングをすばやく片付けてくれます。(こちらとしては少々申し訳ない気分になる)

・客が少ないときは、あそこでもここでもと選ばせてくれる場合も多いのですが、もし気が付いたならトイレの入り口近くの席は避けた方がいい。町なかにトイレの少ないイタリアではレストランに入った人の殆どは用を足すのではと思う位。

 

食堂の親父(シエナ“DINO”にて)

つまらなそうな顔で調理していたが、カメラを向けるとポーズをとる

これはイタリア人のDNAですね

◇注文する

・パスタ一皿というのはルール違反にしてもアンティパストから食後酒まですべて注文する必要はない。私はプリモ、セコンド、ワイン、カフェの4つを注文するのがパターンです。(最初の注文で食事と飲み物を言う。食後、デザートの注文をとりにくるので、甘いものに興味が無い私はこれを飛ばしてカフェを注文する)アレッツォのレストランでイタリア人女性と相席になり、注文のし方から食べ方、精算の仕方など一連の動作を観察する機会に恵まれたのですが、彼女の注文は、アンティパストとミネラルウォーター、そしてデザート。私の注文と合わせるとほぼ完全なフルコースになる訳で、案外自由なものなのだなと思いました。(それにしてもチーズやハムなどよく水で食べる気になるなと感心しましたが)

・パンはコペルト(席料みたいなもの)の内で注文する必要はありません。ワインはただヴィーノと言えばデカンタに入ったテーブルワインのことになります。(ボトルはボッティーヤ、500ccはメッゾリトロ。メッゾ リトロ ディ ヴィーノ ビアンコ ペルファボーレ“白ワイン半ℓお願いします”と言った具合ですね)パンとワインはすぐに持ってきてくれるのでワインを楽しみつつ食事の出てくるのを待つことになります。尚、イタリアではパンはバターなしで食べるもののようでバターが出てきたことはありません。

・パスタはプリモに含まれますが、地方によって多種多様。定番のスパゲッティ アル ポモドーロでさえ無い場合もあります。例えばトスカーナならピチという地元のパスタがあって、ピチの何々というのが並ぶメニューが多かったようです。セコンドも同様で、ガイドブックの対語表がなかなか役に立たないのは上に述べたとおり。結局分からないまま注文して出てきたものを食べる、その繰り返しの中で少し見当がつくようになってくるという感じでしょうか。

・他の人が食べている料理を見て美味しそうなものを選ぶ方法もあります。実際、後から入ってきた客が先に食べているこちらの方をちらちら見ながらカメリエーレに何やら尋ねていることが時々あります。現物を見る分かり易さがあるのですが、言葉の問題もありなかなか実践は難しいのですが。

・ヨーロッパの他の国と同様、観光地ではレストランはツーリストメニューを出します。たいていはメニューに載せている中から定番の料理を組み合わせたもので、個別に注文するよりかなり安い値段で食べることが出来ます。経済的であるばかりでなく注文で悩むことが無いメリットがあります。(もっとも私はアラカルトで頼むことが多い。いろいろなものを食べたいのと、デザートなど食べたくないものまで出てきてしまうのを避けるためです)

 

◇精算

・テーブル精算が基本で、日本でのやり方と違ってこれが面倒で苦手でした。イル コント ペルファボーレ(勘定お願いします)が合図で、伝票を持ってくる⇒お金を乗せて待つ⇒伝票とお金を持っていく⇒伝票とお釣りを持ってくる⇒席を立つ、という手順。客が立て込んでカメリエーレが忙しく立ち働いている時など呼び止めるのが大変です。呼び止めるときの言葉はスクーズィ。

・チップは不要だと思いますが、お釣りの端数などおいてくる場合があります。例えば注文の仕方によっては料金が20ユーロ未満になります(旅行者物価情報(2006)で挙げた例)。このとき20ユーロ札を出して、席を立ちつつ通りかかったカメリエーレに渡せば、向こうも心得ていてグラツィエと受け取ります。こちらも上の手順を省いてそのまま店を出ることができるので楽です。

 

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