ラシッティ盆地

(データ:1986年9月)

ラシッティ盆地を週刊「朝日百科」(1984.2.12発行vol.018ギリシャ)の中の1枚の写真で知った。緑豊かな耕作地の区画ごとに素朴な風情の風車が立ち、全体として無数の風車が盆地に散らばっている。ギリシャに行ったら是非訪れてみようと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

◇峠にて

上や右の写真のように何かでざっくり切り取ったような鋭い地形で、右の写真に見られるような“へり”に向かって風車が何基か建ち並んでいる。邪魔するものがなく相当強く風が吹き抜けそうであるが、いずれも放射状に何本か腕を延ばすばかりで布は張られていない。

眺めの良さもあるからバスはここで小休止、乗客はあたりを歩くことが出来る。風車小屋のいくつかはみやげ物を並べているが、めぼしいものはなく、いかにも貧しい感じであった。

 

 

 

 

◇ディクティ洞窟

PSIHROが終点になっているのは眺望のせいだけでなく、ここからロバの糞が散らばる山道を2、30分上がっていったところに全能の神ゼウスの生誕伝説のあるディクティ洞窟があるためである。ろうそくを持たされてかなり急な勾配を地下へ地下へと降りていく。ある場所でガイドが皆のろうそくを集めて壁を照らすと闇の中に鬚の豊かなゼウスの横顔が浮かび上がる。それにしてもその壁はすすで真っ黒になっているし、別の場所では地底この水をジャブジャブとやるしで、なんとも大らかなものであった。

◇アクセス

イラクリオンの東、マリアからだと南の方角に2千m級のディクティという山があります。手持ちの資料から推定するにラシッティ盆地はその麓に位置すると思われます。バスの便はイラクリオンから内陸部を直行するものとマリア方面に走って途中ヘルソニソスから南下するものと2ルートありました。どちらも一日2,3便であり、現地で確認する必要があります。

 

 

◇ラシッティ盆地への道

盆地は緑豊かで平坦であるが、周りをぐるりと灰色の荒涼とした岩山に囲まれている。ラシッティ盆地に向かうバスは山道を上りに上った後、峠を越えて盆地に下りて行くことになる。この峠からの眺めが素晴らしい。来た方向は山をぱっくり割ったような特異な地形に目を奪われる。標高は1,000m以上あると思われる山中であるが遠く水平線が見えている。(左写真)一方、これから降りていく盆地は薄く朝霧がかかり、畑を焼くのか何ヵ所か煙が立ち上るのが確認できる。

 

 

 

 

◇終点PSIHRO

盆地に下りたバスはふちに沿ってぐるっと回るように走る。やがて少し登り返して終点PSIHROに到着。ここから盆地が一望できる。朝日百科の写真にあったような風車でいっぱいの光景でないのは残念であったが、確かにあちらこちらに風車があって風を受けて回っている。

ラシッティ盆地について、朝日百科の写真に付いていた説明は次の通り。

『クレタ島ラシッティ盆地の風車

イラクリオンから海岸沿いの道路を東へ進んでから、ポタミエス川をさかのぼると、海抜830〜860mのラシッティ盆地が開けてくる。かつてここは、外敵進入のときの島民の避難場所だった。畑に設けられた白い布張りの風車は、夏の盛りに地下水を汲み上げて灌漑するためのものである。盆地に入ってくる風を受けて、風車がいっせいに回りはじめる光景は、見事のひと言につきる』

 

◇その他

バス停付近に食事のできるカフェが2,3あるものの、町といえる集落はなく宿も見あたらなかった。

私としては、一枚の写真に導かれてガイドブックに載っていない穴場を訪れている積りであったが、昼が近づくとバス停付近に続々と大型観光バスが到着しており、ここもまた観光地なのであった。

ネット上では「ディクティ洞窟」で紹介サイトが少し見つかる。

 

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