[ 80年代バックパッカーの風景]
鉄道旅行の愉しみ
(その5) ヨーロッパの“駅弁”
日本の汽車旅に付き物の駅弁。スーパーの“駅弁まつり”で並ぶような「有名駅弁」は増えても、ご飯の水気を吸って波打った経木のふたを取るとご飯と木の香りが立ち上がるあの懐かしいやつはすでに絶滅したのかと思っていました。ところが昨年(09年)秋、鹿児島県吉松駅にてこれに久々の再会、ふたの裏についたご飯を割箸でこそぎつつ、やはり旅はこれでなくてはと思ったことでした。
ヨーロッパに昭和日本的駅弁光景はありませんし、そうでないにしても駅の売店でランチボックスを売っているということはありません。大きな駅ならbarやスタンドでサンドイッチ類など売っていますが、それは町なかでも見られる光景です。また、長距離列車で、コンパートメントで乗り合わせた人たちが広げるのは、たいてい家で用意してきたもののようでした。しかし例外はあって、旅日記によると私は1984年の元旦にヴェネツィア駅で“駅弁”を購入しています。その後列車に乗らず、宿に戻って食べているところを見ると、挑戦してみたかったもののようです。確か当時の「歩き方」に「ボローニャ駅の駅弁は有名」といった情報が載っていた筈で、話のタネにと試した人は私だけではなかったのでは。
さて、下はその“駅弁”の写真。余程気に入ったと見え、中身を枕元に並べて撮っていますが、残念ながらボケてしまっていて、ちょっと分かりにくいでしょうか。
旅日記に細かい記録が残っていて以下のようなことが分かります。
内容は、チーズ、サラミ、ポテトチップ、パスタ、フライドチキン、パン2こ、菓子、りんご、赤ワイン(0.25ℓ)の充実ぶり。今見てみると、一応アンティパストからデザートまでのフルコースの形になっていて、さすがはイタリア。
これはLUNCH BAGという呼称で、上記にナイフ、フォーク、コップを合わせ、左に見える紙バッグに入っていた。おもちゃ箱をひっくり返すような感じが楽しかったですね。
値段は、私が買った「WARM」は7000リラ(約千円)、「COLD」はパスタが欠けて6000リラ。
略式ながら結構ボリュームがあって、昼夜2回に分けて食べるのが正解だったとの感想。