死者の都 ルクソール(西岸)

(データ:1987年9月)

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メムノンの巨像

自転車はこの時部屋をシェアしていたドイツ人ヨーク

彼を見ていると大きさを間違えるが、像の足下に座る人に注目

後ろは東岸から見えてその姿の強く印象に残る山塊

 

◇西岸の見どころについて

これは興味の持ちよう次第ということになるが、幾日か掛けて一通り回っってきた上の写真のヨークには、結局いいのは王家の谷とハトシェプスト神殿だけという意見。私は2日間でその二つともう2、3か所回ったが、ひとつひとつはどれもすごいのだが、続けて回っていると同じものを見させられている感じは確かにあった。

しかし、例えばラムセス3世葬祭殿であるが、ハトシェプスト神殿に比べると神殿の完成度としては見劣りする。しかしその分観光客の姿は少なく、ゆったりした時間が流れる。王家の谷は体力的にちょっと、という向きにはこうした遺跡を選ぶのも手かと思われます。(さらに言うと、東岸の観光客だらけと言っていいカルナック神殿との選択であるならば、その分の時間を西岸に充てるべきだと私は思います)

 

◇ハトシェプスト神殿

岩山を後ろにしてに端正に並ぶ柱の印象的なハトシェプスト神殿は必見の価値がある。神殿内部のレリーフ(美術の教科書などで見てきた具象的なエジプト文字ですね)も素晴らしいが、私がここでお勧めしたいのは向かって右手の岩山に取りつき、小道を上がっていくこと。かなりの急登で体力が要るが、草木が無い場所であるから迷う心配はない。神殿を見下ろしつつ小道を上っていく。(右写真)てっぺんに出て仰ぎ見るとナイル川が横たわっている。尾根を越へてさらに奥に進むと王家の谷を見下ろす場所に至る。私は前日王家の谷に来ていて、昨日喘ぎ喘ぎたどり着いた場所を上から見おろすのは格別の気分であった。王家の谷に降りていく道もあったが(小道は縦横無尽好きなように伸びている)、自転車を置いて来ているので引き返すしかないのは残念であった。

 

◇ルクソール事件

しかしハトシェプスト神殿で忘れられないのは、私が訪問してちょうど10年後、私が立っていたまさにその場所で起きた外国人観光客襲撃事件である。イスラム原理主義の過激派が数十名の外国人観光客を殺害した事件は、その中に10名ほどだったと思うが、新婚旅行で来ていた日本人カップルが含まれていたこともあって大きく報道された。

こういうことがあるからイスラムの国は怖いと思う。観光が主要産業のエジプトであるから政府も過激派の掃討を進めているようだが、落ち着いているように見えてもいつ何が起こってもおかしくないという感じである。

 

◇帰路

T字路から王家の谷に向かう道の左側は草木の生えない砂漠地帯であるのに対して右側は灌漑されていて緑豊かである。日が傾いて夕日を背にT字路から船着き場に向かうとき、草や木が夕陽に照らされて美しく、また岩山を振り返って、あの岩山の向こうまで行って来たんだなと一日の苦労が思われてなかなか良い。(東岸に渡れば、フェルッカの帆をシルエットにしてナイルに沈んでゆく夕日を見ることができる。)

◇アクセス

ルクソールの町で自転車を借りる。貸自転車屋は、探さずとも向こうからいくらでも声をかけてくる。注意点は二つ。ひとつはパスポートなどのデポジットを要求してくること。私の時は何のかんの言ってYH会員証を置いていったのですが、自転車を返しに行ったところバクシーシをよこせとなかなか返そうとしない。パスポートを渡していたら相手の言いなりにならざるを得ないし、保管もいい加減だから気になって観光どころではなくなりそう。もう一つは、ブレーキやタイヤなどよくチェックすること。自転車はどれも日本ならこれを盗るやつはいないだろうと思われるような代物。修理に修理を重ねたような自転車だったが走ることは走った。

ナイル川の渡しは、カルナック神殿の向こう側にある。これはローカルフェリーで、風物が珍しい。西岸に着いたらまっすぐ岩山に向かって走る。3kmほど行ったところにメムノンの巨像があり、さらに進むとチケット売り場のあるT字路に突き当たる。王家の谷やハトシェプスト女王葬祭殿などは右折、ラムセス3世葬祭殿などは左折する。

 

◇王家の谷

東岸からずっと見えている岩山の向こう側にあり、右側から回り込むことになる。フェリー乗り場からだと10kmくらいはあって楽ではない。一帯は砂漠地帯であり、しかもずっと道は上っている。時期にもよると思うが、体から水分が失われていくスピードは想像以上のもので、ミネラルウォーター必携である。到着した時にはかなり疲労困憊。

名高いツタンカーメンのものを始め貴族の墓が数多くあるが、個々の詳細はガイドブックに詳しいのでそちらを。行きに苦労した分、帰りは楽。殆どペダルをこがないままT字路まで戻ることができる。つまりたどり着くまでの体力を考えればいいわけです。

 

 

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岩山に上がっていく途中、ハトシェプスト神殿を見下ろす

ルクソール事件はこの10年後この場所で起きた


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