シェルシェル

(データ:1989年9月)

FH010012.jpg

 

◇奇妙な木のある公園(上の写真)

この公園がシェルシェルの「へそ」のようである。ローマ時代に由来する広場だそうで、出土品が並べられていたりする。木立ちの緑色濃く、幹の間から地中海が見える、印象に残る広場であった。

奇妙な木というのは、根元が瘤のように膨れ上がって、人が腰かけるのに丁度良い具合になっている木のことである。ティパサの項で載せた外部サイトによると「不条理の木」という名前なのだそう。 i のお兄さんの話では、「スペインから渡ってきて、今はアルジェリアでもこの地方でしか生えていない」とのことであった。

町中に鳴り渡るコーランに起こされた翌朝未明、この広場に行って根太の木に腰かけ、未だ暗い海を眺めていると、海上を覆う厚い雲にひっきりなしに稲光が走る劇的な光景が繰り広げられたのでありました。

 

 

FH010011.jpg

 

◇地中海に望む町

バス乗り場近くの海を見晴らす場所で、海を眺めているのが良い。町の連中が通りかかっては腰をおろしたり、海を覗いたりする。誰一人として声をかけてくる者がいなかった。モロッコにしてもエジプトにしても何かの目的を持って話しかけてくる連中に常に悩まされ、マグレブとはそういうものだと思っていたから、ここはそうではないと分かると落ち着いた気分で海を見ていることができた。

港の方に降りて行くと、男の子たちが堤防から代わる代わる海に飛び込んで遊んでいる。この場所には、夕方にもう一度、i  のお兄さんとのきりのない会話を無理矢理切り上げて来た。夕焼けは見損ねたが、男が二人、長い釣り竿を担いでゆっくり行く美しい光景を見た。(右の写真)

◇アクセス

アルジェから海岸沿いに西に100km。バスの便があり、アルジェ市内でも見られた、人の背の高さ位まで白く塗られた並木が続く街道を行く。

バスが海岸沿いの集落に入って、いい町だなと眺めていると坂道を上がったところで停車。シェルシェルであった。少し歩くと海と港が見える場所に出る。2時間前にいたアルジェと比べると段違いの静けさで、のんびりしたもの。

 

 

    i  について

広場のすぐ近くにあるが、2,3時間毎に15分ほど開けるといった具合。私の場合、幸運にもその限られた時間に偶然その前を通って i  を発見し、しかも中にいた若者が、この国では相当に低い確率ながら英語を話した。さらにこの時、宿が見つからなくて途方に暮れていたのだが、親切にも、警察官の団体が宿所にしているという宿に交渉に出向き、ひと部屋空けさせてくれた。

観光客の姿を見かけぬこの町で閑をもてあましているということもあるのだろうが、非常に親切にあれこれ世話を焼いてくれたのでありました。

 

◇宿について

 i のお兄さんの話では宿はこの町に2軒。ひとつは広場の先、市庁舎らしい立派な建物の向かいにある観光客向けのホテル。これは閉鎖中であった。もう一つは私が泊ったアラブ宿で、i の先をもう少し行った左側にある。(この宿泊体験自体いかにもこの国らしいものだったので、これについては項を改めたいと思います。)

 

 

◇ローマ劇場跡(左の写真)

町全体が古代ローマ遺跡の上にあるシェルシェルであるが、町の案内板を見ると、ここが一番の見どころとなっているようである。バス乗り場からほど近く、入場無料であった。広い遺跡であるが、崩れた壁が区画を示すのみで、後は出土品が列になって並べられてある。

人の姿は他になく、壁にもたれてぼんやりしていたところ、じいさんが現れ、手招きする。近寄ると彼の言葉でなにやら言うが、分からないんだという仕草を繰り返していると、一画に引っ張っていき、転がっている石の彫刻のひとつを示し、ひっひっひと笑う。見てみると、本当にその意なのかどうか、男性器の形に彫られていた。何しろそういう、間の抜けたような、のんびりした空気であった。

 

FH010015.jpg

 

北アフリカ編の表紙に戻る  トップページに戻る