宿のこと

◇安宿の魅力◇

どういう宿を好むかによって、旅のスタイルは大きく違ってきます。ことによると、話が通じる通じない位のことになってしまうと思うので、イタリアの話に先立ち、私の宿選びについて触れておく次第です。

私は泊まったことはありませんが、伝統ある名ホテルやイベリア半島のパラドール、ポウサーダのような、宿泊それ自体に価値を見出せるようなホテルを好むことは理解できます。理解できないのは、中級クラスのホテルを好むことで、一定の快適さは保証されていても、慇懃無礼なフロントの決まりきった応対が象徴するように、何が待っているかが予想が出来てしまい、つまらない旅になってしまいます。宿泊も旅の一部だと考えたいわけです。

すると、面白いのは、家族経営の小規模なホテルや民宿などいわゆる安宿を泊まり歩くことで、捜し歩く発見の喜び、主人とのやりとり、建物の造り等々、千差万別、しばしば印象に強く残る体験をします。それらは、大抵、旧市街にあるので、それ自体、百年、二百年という歴史的遺物であり、窓を開けるとヨーロッパという感じは何物にも変えがたいのです。(窓を開けると裏庭ということも多いのですが、私の経験では、これは中級ホテルを値切って泊まった時により多く起こる)

経済的であるだけに、屋根裏部屋だったり、窓がなかったり、ベッドのスプリングがはねていたり、それはいろいろですが、それが旅だと思えば、マイナスもプラスになります。例えば、夏の南仏アルルで窓のない滅入るような部屋に入り、しかも表の広場でロックバンドが演奏しているのが、疲れた心身に煩わしく、全部投げ出して夕方からフテ寝をしていたのですが、夜、目を覚ました時に流れてきたのが、サンタナの「哀愁のヨーロッパ」で、聴いているうちに「俺は今ヨーロッパにいるのだな」というしみじみした感動が急激に湧いてきた、ということがありました。

ロンドンのB&Bでは窓の下を買い物帰りの女性が朗々と歌いながら通っていったり、モロッコを望むスペインの港町アルへシラスでは、船員らしい大男が大いびきをかいている部屋を通らないと自分の部屋には入れなかったりと、予想しない、ささやかなハプニングの連続が旅の醍醐味だと思うわけです。さらに忘れてはならないのはドミトリータイプの宿で、他国からの旅行者と情報交換したり、仲良くなって行動をともにしたり、これらは、もちろん安宿のものです。

 

◇私が欲しい情報は。。。◇

本題に入ります。フロントページの「こんな人に」で、今の「歩き方」についての私の違和感について述べましたが、そのホテル編です。「歩き方04〜05版」の技術編「ホテルに関するすべて」で、部屋に入ったら貼られている料金表をみてぼられていないか確認するべき旨の記述がありましたが、私の実感では、祭りや見本市のときはひょっとするとそういうこともあるのかもしれませんが、普通はそれはないし、フロントとのやりとりはそういうものではないと思います。空きがあればホテル側はそれを埋めたいわけで、旅行者との攻防は部屋に貼られた定価(上限価格)の下で行われるのが常となります。上で述べたように、このやりとりが宿探しの愉しみでもあるわけですが、こちらとしても、無闇に値切るわけにはいきません。常識の範囲、つまり相場があるからです。ところが相場は町により季節により変わるわけで、これがなかなか難しい。まあ適当に決めてしまうのですが、ヒントがあれば随分決めやすくなるはずです。

尚、「歩き方」のホテル情報で役に立つのは、個々の中級ホテルの推薦記事よりも、見出しに続いて書かれている、その町のホテルの多寡や安宿街の所在などの記述で、ここから相場を推定することが出来、また、この町に夕方に到着するのは避けよう、など行動に活かすことも出来ます。

 

◇実録 2004年4月20日(火)ペルージャ◇

午後3時ペルージャ到着、早速宿探し開始。イタリア広場から町の中心11月4日広場にまっすぐのびる500メートルほどのヴァンヌッチ通りの左手に安宿は多そうだと判断、手前から順にあたってゆく。

ETRURIA  安宿然としていて期待したが、インタフォンの返事は満室。遅れをとったかと気を引き締める。

UMBRIA   フロントのPCでゲームをしていた少年が親父を呼ぶ。バス付50ユーロ。「安い部屋を探している」「希望は?」「バス付30」に対して黙って首をふったが、では、と立ち去ろうとする背中に「では40にしよう」の声がとんできた。保留。

ANNA     宿の人の生活が垣間見える典型的な家族経営の宿。受付に出てきたおじいさんが分厚いノートをじっくり検分して、「シングルは一杯なんだ、でもツインなら一つ空いてる」。こっちだと同じフロアのその部屋に案内して「ほらいい部屋だろう、シャワーもある、テレビもある、云々。」一泊40に渋っていたら、「では2泊70,3泊なら90だ。」さらに、宿のカードの裏にそれを記入して僕に持たせ、「早めにもどってこいよ」と送り出した。

PRIMAVERA 小奇麗なホテル 満室だったが、近くにあなたの希望に合うホテルがある、と教えてくれた。

MORLACCHI これがそのホテル。家族経営の安宿。バスなしシングル一泊30ユーロで決着。最上階の屋根裏部屋は、窓は小さめだが、開けると、ぱあっと外光が差し込んできて爽快。

 

所要約一時間。 一泊の相場は バスなし 30 バスつき 40 ということになる。

 

◇2004年4月ウンブリアの主な都市の相場◇

  全てシングル、一泊、バス付、朝食なし

(尚、バスとは、トイレ+シャワーのことです(右図)念の為。)

 

ペルージャ 40

アッシジ  30

グッビオ  40

スポレート 40

 

  バスなしは、10ユーロ程下

  3泊は5〜10ユーロ下

  カード決済する中級ホテルの場合、キャッシュ払いを申し出れば、5ユーロ程度は引いてくれるようでした。

 

 

 

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