シエナ(2006)後編 谷を挟んでシエナを見る

(2006年4月)

シエナはかなり複雑な地形の上に立っている。

三つの丘は互いに体を押し付けあうようであり、

丘と丘とをを隔てる谷は中心部まで深く入り込む。

だからシエナを歩いていると、同じ場所を複数の角度から見たり、

二つの場所を互いに見合ったり、立体構造とでも呼びたくなるような造りに出会う。

 

初めてシエナを訪れたとき、聖フランチェスコ教会あたりから

マンジャの塔方面を見て感心したのが初体験でありました。

マンジャの塔やドウオモ付属美術館の展望台は、超の付く素晴らしさですが、

シエナの展望台はこれらだけではないと思うのですね。

このことを追及しようと今回のシエナ行きのテーマを「谷を挟んでシエナを見る」としました。

このテーマは池上俊一著「シエナ 夢見るゴシック都市」にヒントを得るところ大です。

(以下「シエナ」は同書のこと)

 

 

 

 

(その1)Ort dei Pichiからマンジャの塔を見る

 

シエナの中心カンポ広場からプブリコ宮脇の急坂を下りていくと、

取引に使われた建物が今も残るメルカート(市場)広場に出る。

振り返って逆から眺めるマンジャの塔もいいのだが、

反対側を見るとすぐ足元まで農地が押し寄せて来ている。これがOrt(菜園)dei Pichi。

城壁を築いて、農地や農的な生活空間を締め出してきたのが中世都市なのだから、

初めてこの光景を目にしたときは何か不思議なものを見るような感覚があった。

「シエナ」ではこのことを『他のいかなる都市にも見られない特徴』として、シエナを

『コンタード(注:周辺農村地域)の海に浮かんだ頼りない浮島』と表現している。

 

菜園の入り口はメルカート広場のすぐ下に見つかる。いつもそうなのかは分からないが、

私のときは、鉄柵が開け放たれていて菜園の中に入っていくことができた。

 

 

 

 

(その2)サンタ・マリア・セルヴィ教会からシエナの町を見る

 

Ort dei Pichiの中の小道をまっすぐ進むと、城壁に突き当たる手前、

左手に上がっていく道がある。これを行けば道は再び町の中に入り、

人に道を尋ね尋ねセルヴィ教会に到る。ここからの展望はシエナ屈指といえる。

教会に向かって右側に小さな庭園がある。そこからの方が眺めがいい(上の写真)

 

シエナは大学町でもあるのだが、「シエナ大学」がどーんとあるのではなく、

校舎は町中に散在している。教会の付属建物が校舎に使われるというパターンがあるようで、

教会の右横の入り口を学生が出入りしている。実はここに来る途中道を尋ねたとき、

近道だとして教会建物の中、つまり学内を抜ける道を教わったのであった。

通路を右に左に曲がったり、重い扉を開けて通り抜けたりしたのもそれはそれで面白かったが、

半分空いたドアから講義の様子など見られたのが、大学の空気を思い出して懐かしいものがあった。

他の地区ではサンフランチェスコ教会の右側が大学で、こちらはもっと入り易い。

 

写真左端の要塞のように見えるのが、(その3)のサンタゴスティーノ教会

 

 

 

 

(その3)サンタゴスティーノ教会からサンタマリアセルヴィ教会を見る

谷間の緑地はOrt dei Pochi

 

メルカート広場(写真の外すぐ左)から、セルヴィ教会とは反対方向に坂を上るとすぐ。

この教会も大学が入っているようで、メンザ(学食)があった。

 

この教会は半島のように突き出した台地の上に立っていて、そのふちに沿って遊歩道がある。

町をとりまく農地の展望がよく、ベンチもあってのんびりすることができる。

反対側の出入り口はトゥフィ門に通ずるマッティオーリ通りに面するが、こちらは見つけにくそう。

 

 

 

 

 

(その4)サンドメニコ教会から見るドウオモ

 

この場所から見るドウオモはとても印象に残ると思う。

今「シエナ」が手元に無くて正確な記述が分からないが、

舞い降りた白鳥に例えていたと思う。成る程と思った。

 

 

 

 

(その5)オッセルヴァンツァ教会からシエナを見る

 

行き易いところではなく、旅行者の姿も皆無であったが、それでも訪れる価値があった。

 

オーヴィレ門から町を出て下っていくと、前方は鉄道の通る谷で、

その向うの高台に丁度こちらに対峙するようにオッセルヴァンツァ教会が見える。

あれだなと見当はついたのだが、案内板の類が一切無くて、進んでは引き返し、

やっと見つけたと思って上がっていくと個人の農地で、作業中のおじいさんに違う違うと言われ、

結局その前の分かれ道でこれは違うだろうと捨てた細い山道が正解なのであった。

 

それで何が価値があったかというと、この道中でいろいろな菜園を見たり、

鶏やウサギや犬が飼われているのを見たり、農夫の作業を見たりといったことで、

同じ農でも日本の農村風景とはやはりずいぶん違うのである。

私のヨーロッパは都市のヨーロッパであり、ずっと都市のヨーロッパを追い求めてきたので、

この日の体験はもう一つヨーロッパを見る新鮮さがあった。

 

帰りは勿論迷うことなくカンポ広場に戻ったが、

途中疲れてのワイン一杯引っかけ小休憩を入れて小一時間ほどの距離でありました。

もしこの地を訪問されるなら、予め  で行き方を確認しておくことを勧めます。

 

 

(その6)プブリコ宮から見るサンタ・マリア・ディ・セルヴィ教会

 

これはオマケ (2)の写真の向うからこちらを見ている位置関係。

右下は(1)のメルカート広場とOrt dei Pichi

 

 

 

写真を撮ってこなかったので項目を立てられなかったのですが、

もう一つ主張したかったのは、冒頭に書いたサンフランチェスコ教会から

谷を挟んで見るマンジャの塔の眺め。

私のお勧めは、サンフランチェスコ教会右横のサン・ヴェルナルディーノ礼拝堂。

塔が見える小窓には、椅子が2,3脚窓に向けて置かれていました。

 

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