治安・トラブル対策

 

◇ヨーロッパの治安について

私が学生だった頃ヨーロッパ旅行は今ほどは一般的ではなく、旅先(国内)で知り合う人などからよく、「怖くないのか」とか「自分でも大丈夫だろうか」といったことを訊かれた。日本ではない海外のことであるから資金の問題に加えて、治安のこと、言葉のこと、旅の技術的なことなど心配しだしたらいろいろ出てくる。そういうとき私は「日本で一人旅ができる人ならヨーロッパでも一人旅できる」と答えていた。この無責任な断言は、旅人としての自己管理は洋の東西を問わず必要であり、かつそれで充分という考えからのことであったが、この回答の当否はさておき、治安面に関する限り自分の努力ではどうにもならないことはヨーロッパでは原則として起こらないと考えてよいと思う。

つまりヨーロッパで発生する旅行者相手の犯罪は主としてスリや置き引きの類で、自分が気をつけていれば防ぐことが出来る。この場合、一人旅の方がよほど安全である。1人でいれば緊張感を保つことが出来る。基本動作と言うほどのことではないが、例えばメトロに乗りこんだら車内の様子をざっと見て、気になる感じがあれば立つ位置などに気をつける、混んでもいないのに妙に近くに立つ奴がいればこちらが場所を変える。こういうことが臨機応変に出来るのは1人旅なればこそ、である。(これは私の実感であって、むしろ誰かとつるんでいたときに、後になってヒヤリとすることが多々あった。)

 

基本はセルフコントロールであり、これを守る限り問題はない、これが原則である。であるが、もちろん例外はあって、スペインは数年来暴力的犯行が問題化していて、私は足を向けていない。他に一般的に大都市は、移民の流入といったこともあって危ないこともあるようだ。パリ、アムステルダム、フランクフルト、こういった街ではそれなりの気のつけ方がある。ただし、私の考えでは地域や時間帯など気をつければ済む程度の危険度であって、いまだに暴力バーにひっかかったという類の無自覚としか言いようのない事例が紹介されているのは残念なことである。

 

一時期治安の悪化が警告されていたバルセロナ 現在はどうなっているのだろうか

中央の白い車の傍らに立つ青年は、窓拭きによる小銭稼ぎ

ヨーロッパは若年層の失業率が高く、当然これは犯罪の発生とは正の相関があるわけです

 

◇私の安全対策

@貴重品は貴重品袋に入れて持つ ・・・最重要。貴重品袋がなかったら私は怖くてとても外国を歩けません

  

貴重品袋というのは首から提げて胸のところにくるようにしたもので、パスポート、現金、航空券、クレジットカードなどの貴重品は全て常時この中に入れて持つ。文字通り肌身はなさずというやつで、肌に接触させているから異変が起きればすぐに気付く。最近はそうでもないが、かつてはドミトリー形式の宿に泊まることも多かったので寝るときもそのまま寝ていて、もう体の一部のようになっていた。

 

貴重品袋の存在は犯罪者の誰でもが知るところであり意味が無いという意見もあるが、これは間違っていると思う。犯罪者は無防備な獲物を狙うもので、貴重品袋を使う旅行者だと分かること自体抑止力がある。私自身、以前どこかの路地で、「そこにあることは分ってるんだぜ」と胸を指差されたことはあったが、それだけのことで手を出してくる訳ではなかった。加えて、確率的に怖いのは盗難より紛失であろうと思うのだが、この意味でも保管場所を固定する貴重品袋のメリットは大きいと思う。

 

(貴重品袋の欠点は、特に長旅の場合、連日汗を吸っている訳で日がたつにつれ中身が変形してくることです。お札やパスポートは丈夫に出来ているからいいとして、かつてのカーボンコピー式の航空券の劣化振りはひどかったですね。この点、今のチケットレスシステムは航空券を解放してくれて、貴重品袋の中もスッキリしました)

 

 

A余計なものを持たないこと

私は習慣で財布を持つことがなく、小額紙幣やコインはジーンズのポケットの中。財布を持つから財布を盗られるのだと言えばそれは屁理屈でしょうが、都市の目抜き通りで、大判の札入れを尻のポケットから覗かせて歩いている旅行者を見たりすると「なんだかなー」と思ってしまうわけです。

高価なものを持つから泥棒の気を引いてしまう訳で、何でもかんでも盗られるわけではないのです。ドミトリーで、貴重品やカメラなどを抜いたザックを自分のベッドに転がして外出して、戻ってみると何かが無くなっていたという経験は私にはありません(洗面用具や汚れた衣類など泥棒だって要らないというものでしょう)。

盗られても構わないものと盗られたら困るものとを分け、後者を出来るだけ絞った上で管理の方法を考えます。私のパターンは昔から決まっていて、貴重品袋に入れるのは無くなると本当に困るもの。カメラは大事であるが、カメラより撮影した映像の方がもっと大事。その他のもの、例えば下着などは無くなれば現地調達すればよいので、全然大事じゃない。

 

B臆病であること

気が小さい人物の一人旅というのが、最も無事に帰ってくる確率が高いのではと思う。私がこれに該当し、怪しい路地には入らないし、親しげに話しかけてくる人物にはお引取り願う。バスやメトロでは必要以上に気を使うし、到着した町では宿の確保が最優先。そんなにびくびくしていて楽しいかと言われそうだが、長くヨーロッパを歩いてきて盗られたのはお陰さまで今のところ折りたたみ傘一本のみ。

 

 

≪余談≫

今年(2007年)4月パリのメトロに乗っていて、降りる際、尻ポケットあたりを触られた。いつものように無意識のうちに周囲の感じを見ていた積りだったので虚をつかれた格好。何も入れていないので、実害のないことはすぐに思えたが、偶然とは思われない感触は気持ちの悪いものであった。上記のあれこれも知ったように書いていますが、やはり何が起こるか分からないので、これからも精々用心したいと思います。

 

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