言葉について

 

(一番下に2010年、2016年追記)

 

結論としては、言葉ができなくても旅はできる。でも話せるなら話せるだけ旅は面白くなる、といったところでしょうか。

 

まったく話せないとどういうことになるか。中高と6年間英語を学習する我々は、できないと謙遜しつつも実際には英語を知っています。問題はむしろ相手にあって、かつてアルジェリアを訪れたときのこと、あそこはフランスを旧宗主国とする国であって英語が全然駄目。それこそ「ホテル」とか「ステーション」といった言葉が通じないわけです。人間はそこらじゅう大量にいるのですが言語的に全く私は孤独で、人と人との間をさまよいつつ、シェルシェルという町に行くバスの乗り場を見つけるという、ただそれだけのことで午前のひと仕事が終わったぐらいの感じでした。ただ、これはヨーロッパではまず起こらないことで、かつて英語が通じにくいとされたスペインでも果てしなく道を尋ね続けるということは多分もうありません。

 

しかし、一人旅の良さのひとつが、土地の人や他の旅行者とのコミュニケーションにあるとするなら上手に話せれば話せるほどよいということになります。実際、YHなどで、皆で話すときアメリカ人やドイツ人の話す英語のスピードについていけず、どうしても黙りがちになり、向こうも段々とこちらに話を振ってくれなくなってきて、一人とり残されたような思いをする、といったことをずいぶん経験してきました。駅やi での情報収集でも言葉が達者なら余計な苦労をせずに済みます。

 

ということで、知らないよりは知っていた方が・・・という結論に至る訳ですが、英語についてはわれわれ日本人の意識は高く、私がでしゃばることもないので、この項は以下、フランス語、イタリア語、スペイン語学習についてコメントしようと思います。

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次の瞬間このイタリアーノが、「撮りましょうか?」 (シチリア・パレルモ空港にて)

 

[フランス語、イタリア語、スペイン語学習のすすめ]

何故これらの言語か、というのは南欧諸国では英語が通じにくい場合があって、ちょっとでも知っているととても助かる場合があるというのが第一点。もう一つは、これらの国の人は、概して親しみやすく、かつ自国の文化への愛着が強く、東洋から来た旅行者がカタコトにせよ自国語を知っているととても喜んでくれるからです。

これらの言語をかじると、何故英語が国際言語として確固たる位置にあるのかがよく分かります。英語という言葉は合理的に出来ていで、外国人にとって習得するのが楽なのです。つまり、仏、伊、西語はそれだけ難しいという訳ですが、学校での語学学習と違って自分の好みに合わせてやれば良く、義務がないとなれば気楽なものです。旅先で使うという目的があるのだから、覚えられるものだけ覚えて、そして現地で何度も使ってみる、そして相手の反応を見て楽しむ、の精神です。私は、映画などで耳にするナチュラルな英語はほとんど聞き取れません。ところが例えばイタリアでローカルバスに乗った時など運転手と乗客の大声のやり取りは、意味は分からないにしろ単語としてはかなり聴き取れます。これはイタリア語やスペイン語の発音が日本語と酷似している為で、日本人が学習する言語としては英語よりもこれらの言語の方が向いているのではないかと思うほどです。

 

 

[フランス語、イタリア語、スペイン語学習の方法]

@    なんといってもNHKの語学講座がお勧め。特にラジオ講座。毎日少しずつは語学学習の基本。3言語全部やったとしても、費用はテキスト代月千円強のみ。今期から3言語は連続の放送(仏7:30、伊7:45、西8:00)となり、続けて聞くにも、予約録音するにも便利になった。また、NHKHPhttp://www.nhk.or.jp/gogaku/)で先週分の番組を聴くこともできる。

A    テレビの方は、週1回なので基本的に語学学習には向いていない。ただ、映像があるから番組によっては旅行気分が味わえる。この面については、ラジオ・テレビ共にテキストに思わぬ掘り出し物がある場合も。0607のフランス語のテキストは、作家加賀乙彦の連載(半世紀前、同氏がフランスで勤務医をしていた時代のエピソード)があって興味深かった。

B    3言語の中ではイタリア語が入り易い。フランス語がもっとも汎用性がありそうだが、最も難しく感じる。

C    ラジオ講座は、過去形、関係詞、分詞構文なども出てくるので、英語でいえば中学卒業レベルか。ただ、あちらが3年間でやることをこちらは6か月でやってしまうので結構きつい。つらくなったらやめてしまって、新講座の開始を待てば良いと思います。会話に分詞構文は要りません。

 

[私の旅先会話法]

必要性からして、“I want to 〜.”と“Can I 〜?”に相当する言い回しを連発することになる。イタリア語ならば、“Vorrei〜.”と”Posso〜?”である。これの良いのは、その後動詞を続けることになるので単語でなく文章で話すことに意識がいくことと、答えが想像しやすいので会話が続くことである。他に“Do you have〜?”も同じ効用がある。どうぞお試しを!

 

[蛇足]

フランス語の難しさは音にある気がする。子供の時から知っているメルシー(“merci”)はメルシーでなく、[めhッスィhi]と聞こえる。声に出して覚えたいのにそもそも発音できない。ジュ、ジェ、ヴェといった一音節の言葉が重要な意味を持ち、覚えようと張り切っても前後の単語とのつながりで音が変わってしまうとあっては嫌になる。動詞の活用にしてもスペルが変わるのに音は同じなどということがあっていやらしい。

スペイン語の音の特徴は巻き舌(rr)が有名だが、私は英語のthの音に聞こえる“ci”の音や、喉の奥から出る強い“h”の音にスペイン語らしさを感じる。まったくの偏見ではあるが、私はスペイン語の“s”の音が重なるのがどうもダサい感じがして仕方ない。白い家「ウナ・カサ・ブランカ」は、複数になると「ウナス・カサス・ブランカス」。こういった場合イタリア語は母音が変化するのでなんとなく都会的。動詞の2人称単数の活用についても同じことを感じる。(まったくの偏見です)

イタリア語については、北杜夫がドクトルマンボウシリーズで、国際列車がイタリアに入ったとたん周りの連中が何とかアーレ、何とかエーレとか喚きだした、というようなことを書いていたと思うが、悪く言えば騒々しい、良く言えば快活な感じがある。NHKテキストでイタリアの写真や、イタリア料理のレシピを眺めつつ学習するのは楽しくて、それで上でイタリア語学習を第一に推した次第。

なお、私は「フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本」(ナツメ社)というのを持っているが、3つの言語が似ていることを利用した面白い発想だとは思うものの、よく似ているだけにものすごく混乱します。迷路に入ること自体を楽しみたい人はどうぞ。

 

 

[2010年12月追記]

ドイツ語を少しかじってみようと、この10月にラジオ講座を聴取開始。これが自分でも感心するくらい頭に入らず、2ヶ月で挫折。一回目がどうにもならないのは他の言語の時もそうだったのでこれは想定内のことではありました。しかしである。講座は、無味乾燥と言っていい進め方で、これでは、ただでさえ難しいドイツ語を初心者から遠ざけるだけではないかと思ってしまいました。

思い出したのは、数年前に「基礎英語」を子供と一緒に聴いたときのこと。テキストの英文を読んでいて、これは初めて英語を学ぶ人を対象にするには難しいのではないか、しかも必然性のない難しい単語を含んでいて不必要に難しくしているのではないかと感じました。子供は本来は真面目だから一生懸命ついていこうしていましたが、やがて耐えきれなくなって投げ出してしまう。何かを新たに学ぼうとする人は頑張ろうという気持を持って始める訳で、入門編は、そういう期待を裏切るようなものではいけないのではないかと憤ったことでした。

 

今のラジオ講座でドイツ語と好対照なのがスペイン語。これはベテラン講師福島教隆氏の話術が巧みで、スペイン人ゲストとの軽妙なフリートークはこの人ならではのもの。ただし、体系的な文法講義ではないので、別の意味で初心者向けとは言えないのかもしれない。もしかしたら、とふと思ってしまうのですが、スペイン語の講師はなんとなくバルで賑やかにやっていそうな人が多い気がします。イタリア講座の講師は陽気なタイプが(現在放送中の人は地味。その代り文法講義は手堅い)、フランス語はお洒落な人が多いような。今回の講座では、言葉を学習するのにどうしてああつまらなくしてしまうのかと思わされた訳ですが、あれがドイツ語学派の主流だったらどうしよう・・・。

 

NHKオンライン(NHK語学番組) ⇒ http://www.nhk.or.jp/gogaku/

各国語一週間分のラジオ講座を聴くことが出来ます

 

 

[2010年12月追記]  今年前期のNHK講座

 

入門編(月〜水)・・・西仏伊、全て新作。しかも3言語、見事にスタイルが割れました

スペイン語(7:15)  旅のフレーズ集 6月は、“Quiero 〜 ?”(私は〜が欲しいです)など3フレーズ。半年で18フレーズだから、いやにのんびりしている。

フランス語(7:30)  スキットをベースにした総合学習。友人のカズが行方不明になるという変な話。内容濃いが、初心者には難しすぎるかも。

イタリア語(7:45)  ひたすら地道な文法反復演習。体系的な学習が好きな初心者に最適だが、既修者には退屈。

 

応用編(木、金)・・・3講座とも再放送。どれも私には難しく、入門編と応用編の中間ぐらいの講座が欲しい

スペイン語  日本文学をスペイン語で読む 5月は「注文の多い料理店」、6月は「徒然草」

フランス語  フランス語ニュースを聴く

イタリア語  日本語ニュースの翻訳講座

 

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