パリの大道芸人

 

ヨーロッパの大きい町を歩いているとしばしば大道芸人を見かけます。お笑い系から芸術派まで、

小道具を多用して観光客の拍手喝さいを浴びるものからカジュアルなストリートミュージシャンまで多種多様。

パリに限らずヨーロッパ中で日々人々を楽しませているのであります。

ロンドンの薄暗い地下道に音色を流す老バイオリニストやオランダあたりの手回しオルガンなど

それぞれ捨てがたい風情がありますが、

ここではパリにおける大道芸人のメッカ、ポンピドーセンター前から実況中継を。

 

(以下1991年1月6日の旅日記から・・・少し長いですが、現場の空気を再現したいと思いまして)

 

『表に出ると、いくつかの日用品を組み合わせたドラムセットを前に黒人のオッサンがパフォーマンスをやっている。バナナと称する曲で、バーナーナと時折叫んで吊るされたバナナを叩くと、バナナが観衆の方へと飛び散る。小さな女の子が喜んで手を叩いたり、踊ったりしていた。』

『外に出てみると大道芸人が何組かいてそれぞれ人垣が出来ている。ドラムの黒人はいなくなっており、おなじみの火を体にこすりつける男、無表情でスローモーションの動きをみせるグループ、プラスチックのバットを持って上半身裸のオーバーオールで何事か面白いことをわめきながら、JAPAN 、AFRICAなど各国人を観衆の中から選び出しては頭を誰彼となくそのバットで殴りつけては笑いをとるヒゲのオッサンなど。』

『感心するのは観衆の率直さで、面白いと思えばすぐに人気が集まる。スローモーションの動きをやっているグループの近くで、リュックサックでやって来た(日本人らしい)東洋人の女の子がリュックの中をゴソゴソやっている間はもちろん誰も関心を払わない。しかし、彼女が、超スローモーションの動きで、人が卵になり(ビニール袋の中に体を押し込み見事に小さな球体となる)また卵からかえるというパフォーマンスを始めると、たちまちにしてそれをとりまく人垣ができる。来た時からずっと歌っていた頭のはげたどう見てもパッとしない東洋人の男はしっかり固定客があって、周囲に座り込んでいる連中がいる。逆に、これと人気のバットおやじの近くで歌っていた男は一人も観客がいない状態で、正統派フォークソングといった感じであったが誰にもかえりみられず気の毒にもむなしく歌い続けていた。バットおやじは、一段高いところにあるところに鈴なりになっていた見物客のところにも見物料をとりに乱入し、(多分)‘それだけか’とか‘お前今ここから金をとったろう’とかわめきまくり、わめかれた方の連れが何かからかうとすかさずバットでなぐり、いちいち笑いをとりながらやりたい放題であった』

 

まずは最もポピュラーな火吹き芸人。スティックを次々に宙高く投げ上げるなどはありふれている

カセットで音楽や予め録音しておいた音声を流すというのがよくあるパターン。小道具多用お笑い系はタイミングのよさで笑わせる。

アート系。ころがっているビニールの球体の中身は人間。パフォーマーは小柄な東洋人女性で、立ち姿から無表情、無言のまま極端にゆっくりした動きで卵になり、またもとの立ち姿に戻る。この間なんと30分近かった。見る方も忍耐力が要る。

日用品とバナナによるドラムセット。名作「バナーナ」。

ぶら下げられた数本のバナナは、「バナーナ!」の叫び声とともに飛び散って、既に無い。小さな女の子がすぐそばに立って夢中で見ていた

 

 

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