◇◇いまや幻の草創期「地球の歩き方」ヨーロッパ編◇◇

初めにハッキリ言っておきたいのですが、私は昔も今も「地球の歩き方」の愛読者です。掲載されている所に日本人ばかり集まるとか、外地で日本人同士すれ違う時、同じ本を手にしているのがバツが悪いとかいろいろありますが、情報の量、質において、海外に行く時は、やはり最新刊を手にしますし、そうして今までに買った各地、各年版の「歩き方」は私の本棚の一段を埋めております。

しかし、同時に言いたいことは、草創期の「歩き方」は人気シリーズ化するのと歩調をあわせ、内容を大きく変えてしまい、今となってはタイトルは同じでも、趣旨の異なる本になってしまった、ということです。今この文章を書くにあたって、共にヨーロッパを都合3か月歩いた盟友「ヨーロッパ編 82〜83版」(これが3訂版。当時は未だヨーロッパ編とアメリカ編だけだったような)を引っ張り出していますが、これをめくりながら、何が変わったのか、そして当時の「歩き方」がどういうものだったのか紹介したいと思います。

 

ざっと目を通して思うのは、時代がかわったのだなということ。当時は学生による長期間の旅行(バックパッキング、貧乏旅行というスタイルを含む)の拡大期でした。初めてヨーロッパを歩いた学生は、憧れの地で見知らぬ風物に触れた感動を持って帰国し、その体験、その感動を後輩たちに伝えようとしました。その場のひとつが「歩き方」だったのだと思います。こうした熱気はまた、編集部の方々のものでもあり、実際、私自身、始めての渡欧を前にして、ヨーロッパの旅の仕方について編集部の方にアドバイス頂いたということがありました。

このような空気を背景に当時の「歩き方」にはつぎのような、既存大手のガイドブックにはない画期的な特長がありました。

 

◇旅の技術を教えるものであったということ。

それまで観光情報を伝えるガイドブックしかなかった中にあって斬新なことでした。観光情報は現地のi で入手すればいいのであって、むしろ i というものの存在や使い方を紹介するのだ、というメッセージは旅人には魅力的でした。「困ったときは駅に行け」などの数々のキャッチフレーズは、一部当時としても実情に合わないものもあったと思いますが、それでも基本を知ることは大切でした。

 

◇経済的な旅行を追及していたこと。

主たる対象を学生の長期旅行においていたので、これは当然であり、この視点も既存の本にはないものでした。82〜83版の表紙には 「ヨーロッパを一ヶ月以上の期間、一日3,900円以内でホテルなどの予約なしで鉄道を使って旅する人のための徹底ガイド」 とむしろ誇らしげにコンセプトを打ち出しています。

 

◇個人的な体験談満載であること。

町情報は殆ど書き手の印象記みたいなもので、つまりは主観の世界なのですが、実はこれが最も気に入っている点です。例をあげると、パリの北方にアミアンという町があるのですが、私は、「僕らは時をさかのぼる!」というこの文句だけで、パリから出かけていきました。考えてみれば、殆ど意味を持っていないようなものですが、人を旅へと駆り立てるものはイメージなのだからこれはこれでいいのです。歴史や建築、美術などについての詳細の方がむしろ2次的な情報であり、そういうものがなくて本当に残念な思いをしたのは、無数の記号の集積といっていいローマやポンペイなど一部の都市に限られていたように思います。

また、ホテル情報などは、読者投稿のウエイトが現在のものよりずっと高く、しかも、「フロントにやさしいおねえさんがいて、誕生日だと告げたらコーヒーをご馳走してくれた」、という類の、だからどうしたといいたくなるようなものが平気で載っている訳ですが、旅は一人一人の個人的体験である訳で、生の情報は、自分の明日の一歩どちらに向けるのかを決める材料になったものでした。

 

◇◇このホームページについて◇◇

20年という時がたてば、かつてのバックパッカーも家族もちとなり、海外渡航者は1千万人を超え、しかもリピーターが主流となり、海外旅行を良く知っている人が増えた反面、かつてのバックパッキングというスタイルは少数派になりました。「歩き方」も読者のニーズを反映して、記事は詳しく、そして洗練されたものとなりました。しかし、草創期の「歩き方」で育ったものにとっては物足りなさを感じてしまう訳です。情報にしても、例えば町のホテル情報をみるとき、そこに紹介されているのは三ツ星クラスの中級ホテルが主体で、それらは恐らくもっとも見つけやすいゾーンであり、自分が必要とする安宿情報はそこにはありません。(このことについては、イタリア編でとりあげたいと思っています)

そこで旅行するに際して必要な情報をインターネットで調べるようになりました。それらは多くは個人の体験記であるので、かつての「歩き方」の情報と同様、玉石混交なのですが、その中から貴重なヒントを得ることがありました。ならば、自分の体験が次の人のヒントになることがあれば恩返しになるのではないか、これがこのホームページを立ち上げた動機です。

 

◇こんな人に

上の「歩き方」のキャッチを真似るなら 「ヨーロッパをバックパッキングスタイルで、ホテルなどの予約なしで、鉄道を使って一人旅する人のために役に立つ情報を」 といったところでしょうか。要するに自分のスタイル以外のことは書けませんので...ということです。

バックパッキングスタイルと言ってもさまざまで、学生時代は「一日4千円の旅」を実行していましたが、今は宿はドミトリーはもう泊まりませんし、食事も一日一回はレストランでとるようになっています。サバイバル派には「なあんだ」という感じを与えると思いますが、個人旅行する方には、首をかしげる部分はあるかもしれませんが、お役に立てる箇所もあるのではないかと思います。

 

 

◇◇インフォメーション (2004年5月25日)◇◇

1.まずはイタリア編、それも直近の情報があるウンブリアからスタートしたいと思います。

2.パソコンやHP作りに関して素人なので、かっこいいレイアウトは無理であるし、アップロードのトラブルから遅滞が予想されます。

 

◇◇インフォメーション (2004年7月15日)◇◇

1.スペイン編をスタートさせました。

2.イタリアと異なり、最後の訪問年は1993年であり、情報の賞味期限が問われそうです。もっともヨーロッパの町は10年や20年で姿が変るということはないので、印象記としては現在に通ずる筈で、この考えを心の支えとしてこの先も作成にいそしみたいと考える次第であります。

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